ストイックなドリンカーの日々 ~Drinker's Diary~ モルトウイスキーをこよなく愛する男の日々の記録

2014.12.19【日記】

ウイスキーの知識や資格に関する私見 (前編)


NHKの連ドラ「マッサン」の効果で,最近雑誌などで過去にないくらい大量のウイスキー関連の特集が組まれています。
私も「ウイスキー」の文字に反応してしまい,その多くに目を通します。大概立ち読みですが。(笑)

多くは一般向けの雑誌ということもあり,ウイスキーとは何ぞや,どんな原料を使ってどうやって作るか,どんな地域にどんな蒸留所があるのか,などなど,ウイスキーの基礎知識もある程度書いてあるものが多いですね。

さて,ウイスキーを深く楽しみ,テイスティングスキルを上げていくうえで知識はどの程度必要なのでしょうか。
また,それに関連して,ウイスキーに関する資格などは意味があるのでしょうか。
そういったことを以前からしばしば考えており,愛好家のなかでもかなり意見が分かれるところかなとは思いますが,今回良い機会なので私見をまとめてみました。


まず,知識に関してはある程度以上あった方が良いと考えています。

もちろん,なんとなく飲んでも美味しいものは美味しいですし,経験が増えれば好みの幅も広がっていくでしょう。
また,好きな蒸留所の特徴や地域など,わざわざ能動的に学習しなくとも飲んでいるうちに自然と覚えてくる知識もあるでしょう。
とはいえ,効率良く経験値を積んでいくためには,早期からベースになる知識があった方が良いと考えます。

また,未だにマッカランを所有しているのがサントリーだなんてことを当たり前のようにBARで語る人がいたり,ネットで明らかに間違った情報を悪気なく流す人がいたりと,受動的に得た情報はやや信憑性に欠ける部分があると思います。
ウイスキーと真剣に長くお付き合いしていくつもりがあるのであれば,正しい知識を能動的に得ていくのが好ましいと私は思います。

 


これらは私が買って読んだウイスキーに関する本や雑誌などの一部です。
改めて引っ張り出してみるとすごい量です。。。



知識に関して,スコッチのモルトウイスキーに限って具体的に書くなら,
・モルトウイスキーとブレンデッドウイスキーの違い,シングルモルトとは何ぞや
・モルトウイスキーの作り方(製麦,糖化,発酵,蒸留,熟成など)
・蒸留所に関して,
 どの地域のどこにあるのか
 どういう作りをしているのか(ポットスチルの形態,ピート使用の程度,フロアモルティングの有無,仕込み水の硬度,など)
 所有している企業とどういうポリシーで作っているのか(シェリー樽・バーボン樽にこだわる,など)
 過去にどういう作りの変化があったか(~年までフロアモルティング,~年に閉鎖・再開,など)
・樽の種類や樽による香味への影響
・熟成期間による香味の変化
・ウイスキーの飲み方や基本的なテイスティングの方法

パッと思いつくところだとこんな感じです。

他にも,スコッチウイスキー&スコットランドの歴史と背景にある世界情勢なんかも知っていると理解も深まり楽しいと思いますが,さすがにここまで含めてしまうとちょっと大変ですしテイスティングとは関連が薄くなりますね。

上記の知識の一部でもあれば,その部分に関して思いを巡らせながら目の前のグラスと向き合えると思います。
「このウイスキーはこんな味がして美味しい」,というのも,知識があれば,「このウイスキーはこの種類の樽で~年熟成して,この地域でこの時期はこういう作りをしていたからこんな味なんだろうな,そういえば同じ地域のこの蒸留所と似た香味があるな」,などという楽しみ方になります。

あくまで例ですが,
・このウイスキーはブレンデッドウイスキーと比べるとクセがあるけど,それはシングルモルトならではなんだな
・このウイスキーは煙の香りが強くバニラっぽさも感じるが,それはアイラの蒸留所でバーボン樽熟成にこだわった作りだからなのかな
・このウイスキーは複雑なフルーツの香りがあってアルコールの刺激が少ないけど,それは長期熟成したからなのかな
こういったことを考えながら飲み続けるわけです。

また,そうして考えながら飲むと,好みかどうかだけでなく,興味深いかどうかという面でもウイスキーを楽しめます。
より多くの価値観でウイスキーを評価できるようになり,多種多様なボトル達に対して優しくなれる気がします。

そして,そうやって知識をベースに深く考えながら味わった方が,記憶にも残りやすいと思います。
以前記事にしたように,飲み込んでいくと無意識に過去の経験・記憶にあるボトルとの比較をしながらテイスティングをすることが多いですから,より深い記憶を残すことは未来のボトルをより深く楽しむことにつながります。

なお,蒸留所のハウススタイルやヴィンテージごとの特徴,そしてボトラーごとの特徴など,味わいの特徴に関するイメージもあるとテイスティングをより深められると思いますが,これらに関してはあらかじめ知識として詰め込むよりも知識や経験をベースに飲みながら覚えていく方が記憶に残ると思います。
そしてそういう経験とイメージが増えていくと,さらに深く考えながらテイスティングできるようになると思います。

今思い出すと,自分にとってはむしろここから先のほうが,テイスティングをより深く楽しく行うことに直接つながっていったと感じます。
知的好奇心を満たしながら飲み続けていくわけです。飲んでは知識をつけて,またその知識を持って飲む。
そうやって飲んでいくと,理解が深まりさらに知的好奇心を刺激されるようなものに出会うという良い循環に到達します。

ちなみに,私は未だにオールドボトルの知識やその年代を見極めるための知識に乏しいですし,まだまだ蒸留所やヴィンテージによる特徴も十分に捉えられていません。
やはり飲みながら知的好奇心を満たす毎日です。


そんなわけで,いろいろ飲む前にある程度の知識をつけておいたほうが,より楽しいウイスキーライフになるのではないかと私は思います。

一般向けの雑誌の特集もわりとしっかりとした内容だったりすることもありますが,やはり万遍なく網羅されているとはいいがたく,どちらかといえばウイスキーに特化したある程度の量もある書籍を参考にした方が,体系的な知識になりますし,辞書的に使えたりしますし,痒いところに手が届くと思います。


では,どんな書籍が良いのでしょうか?
私の場合,今は次回に書く資格取得の際に使用したテキストが知識のベースになっていますが,正直これはかなりマニアックな内容で,本も分厚く白黒で,それこそ資格を取るつもりでもない限りとっかかりにくいので最初はお勧めできません。
その前には故MJのモルトウイスキーコンパニオン,土屋守さんのモルトウイスキー大全なんかを読みつつテイスティングをしていましたが,主に蒸留所についての知識を得るために使っており,それとは別に体系的な知識をつけるために読んでいた本もありました。
しかし10年以上前のことで,本の名前までは覚えていません。今それが売っているかどうかもわかりません。

私がすでにある程度知識をつけてから読ませていただいた本で,飲み始めのころに読んだら良かっただろうなと思った本には,吉村宗之さんがお書きになった「うまいウイスキーの化学」があります。
持ち運びしやすい小さめのフルカラーの本で,用語や製造,各蒸留所の特徴,そして飲み方に関しても記載があり,とても読みやすいです。
個人的には,樽の種類のディテールやそれらで熟成した結果として出てくる香味などのもうちょっと突っ込んだ内容,そして特に著者である吉村さんが得意とされているテイスティングに関しての記載が欲しいなと思うところではありましたが,モルトに興味を持った人の痒いところの多くに手が届く内容だと思います。

また,私の知人のウイスキー愛好家の中でも,ここ数年の短期間で驚くほどのスキルを身に着けた方(よくコメントもくださる大島さんです)からも教えていただきました。
やはりコンパニオンや大全も使っていらっしゃったようですが,体系的な知識を付ける本としては「ウイスキー&シングルモルト完全ガイド」という本を何度も何度もお読みになったそうです。
せっかくですので,ここで紹介するにあたり,私も買って読んでみました。
マニアックになりすぎないレベルで,イラストや写真も多く,それでいてウイスキーを理解するうえで必要な,特に初心者の痒いところに手が届くような内容がかなり網羅されています。
スコットランドの情報や現地の雰囲気などについて書いてある部分もあり,現地への親しみも湧いてきます。
ちょっと前の本なので,ボトルや蒸留所の情報に関しては今と異なっている部分も結構ありますので,そこには注意が必要(特にボトルとそのテイスティングノートは今のものと違っているものがほとんどです)ですが,先ほど書いたような,ウイスキーを深く楽しむうえで有効と思われるような知識をつけるのには十分に役に立ってくれそうな本でした。

どちらの本も,まだ基礎知識に自信が無い方や,知識を整理したい方には特にお勧めできる内容だと思います。




他にも,特に最近のものでお勧めの本がありましたら,教えていただけると幸いです。

 

次回は知識に関連して,資格の話を書きます。

 

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  • Posted byT.Matsuki
  • at2014.12.22 20:09
T.Matsuki
もちろんベースの知識が無くとも,その場その場でモルトを片手に美味しく楽しく過ごすことはできますし,そういう楽しみ方もいたって正しいと思います。

その人のスタイルに合うか合わないかというのはあるでしょうが,我々のように考えながら突き詰めて行くのが好きなドリンカーの楽しみ方も紹介できたらと思い,今回の記事を書きました。
実際,こういう楽しみ方を長いことしていますが幸せですからね。

そして,やはり突き詰めて行くタイプのドリンカーさんやバーテンダーさんと意見交換できる環境なのも本当に幸せだと思いますし,可能であればこのブログでもそういうやり取りがいろんな人とできたらいいなぁとも思います。

今回の記事を公開するにあたり,大島さんには貴重なご意見をいただき,ありがとうございました。
  • Posted by-
  • at2014.12.21 18:51
飲む事、経験してみる事が一番大事なのはもちろんですが、知識があった方がよりウイスキーの世界を楽しめますよね。

特にシングルモルトは個性がはっきりとしたお酒だと思いますが、その個性がどこから来ているのか、その味になる理由がわかっていれば、好みのお酒に巡り会う確率も上がります。

知ると興味が沸き飲みたくなり、飲むとまた知りたくなる、というところが、私にはとても合ってるお酒でした。

もちろん、書籍に載っている知識は入り口にすぎないし、一番は経験豊富で信頼のおけるバーテンダーさんやドリンカーさんと、そのお酒を前に飲んで得られる知識や経験だと思います。

そこからがホントに面白いので、それができるレベルになるために、興味が湧いたら本を1冊読んでみることをお勧めしたいですね。

私がよく読んだものは取り上げていただいた通りなのですが、今読み直してもよくまとまっているなあ、と思います。

多くの方がウイスキーの楽しさやおいしさを知って、一過性のブームに終わらずウイスキーが根付いていってほしいと思います。
  • Posted byT.Matsuki
  • at2014.12.20 01:53
T.Matsuki
>下野さん

読んでいただきありがとうございます。
ウイスキーは懐の深い嗜好品ですから,もちろん別の考え方の人もたくさんいるでしょうし,いろんな楽しみ方があって良いのだと思います。
とはいえ,自分にとってウイスキーは人生における特別な楽しみになっており,そこまでのめりこむことができた経緯と考え方をお伝えすることは,私見とはいえ読んでいただいても良いのかなと思って公開することにしました。

私もいろんな人の影響を受けながら成長していますし,そういう機会や出会いに感謝しています。
多少でも,そういう影響を与える側になれたらとても幸せです。

お勧めの本のご紹介もありがとうございました。
是非拝見しようと思います。
  • Posted by-
  • at2014.12.19 20:58
拝見しましたが、非常に共感できる内容で、これからウイスキー飲み進めて行こうと思っている人には、ぜひ読んでもらいたい記事だとと思いました。

こういう個別のボトルのことではなくて、どういうふうにウイスキーに向き合ってくべきかという切り口で、真剣に書いてくださる方が、なかなかいないですし、こういう記事を今後も書いていただけると、個人的にも嬉しいですし、モルト界のためにもなると思いますので、期待しています。

以前のアクワイアード・テイストの記事もそうです。

個人的に、ウイスキーの基礎知識を学んだのは、土屋先生のシングルモルトを愉しむ(※今は、改定されています。)で、この本を何度も読んで、基礎知識を得ました。

テイスティングノートを書き始めたきっかけは、モルトバーのバーテンダーさんのブログで、SBTに参加してからは、松木さんの書き方や表現に影響されています。

、初心者の方に、自分がおすすめしている本は、ワイナートのウイスキー基本ブックで、適度に写真や製法をおりまぜながら、個別のボトルや蒸留所の情報が載っているので、気軽にウイスキーの基礎をかじるにはちょうどいい本だと思います。

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