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グラスゴーでの再会

2012.06.07~08

 グレンゴイン蒸留所見学を終えて、2階建てバスに乗ってグラスゴーまで戻ると、まずは荷物を置きに今夜の宿へ向かいます。

 私のような貧乏旅をしている人物にとって、宿の確保というのは頭を悩ませるところ。その上、蒸留所巡りなんかをしていると、どうしても辺鄙な場所に行かねばならず、そうなるとそもそも宿がない。やっと見つけた宿も、随分としっかりしたホテルだったりして、そうなると今度は金がない。となると、無理をしてでも次の町まで行かなきゃ行けないのだが、今度はそこに行くまでの交通がない。といった次第で、これまでも宿の確保を念頭においたプランニングに苦心していたのですが、そこはグラスゴー。大都市も大都市、首都である。いくらでも安ホステルが見つかるもので、その中でも安くて市街地の中心にあるようなホステルを予約。意気揚々と向かいます。

 到着してドアをくぐって見ると、まるでホステルではないような立派な受付。うっひょー!さすが大都市は違うぜー!なんてテンションをあげながら、チェックインを済ませようとすると、そのカウンターの前にはなにやら見慣れたアジア人の後ろ姿が。まさか、と思いつつ声をかけると、なんと、アイラで9日間同室だった台湾人のザックではないですか!「ヘイ!ザーック!」なんて声をかけて、相手も驚き顔。確かに彼もアイラの後はグラスゴーに向かうと言っていたし、安いホステルを探していれば当然ルートも限られてくるものとは思いますが、まさかホステルに到着するや否や、こんな再会を果たすことになるとは。しかも、チェックインを済ませてみると、なんと今度も同じ部屋。ここまでくると笑えます。二人で、荷物を適当に降ろしたら「とりあえずメシでも食いにいきますか」と連れ立ってケバブ屋さんへ。

 一緒にケバブをむさぼり食べながら、アイラを出てからこっち何をしていたかなどの近況報告会。「俺は今日グレンゴイン行ってきたよ」「そこは明日行く。昨日はオーヘントッシャンとロッホローモンド行ってきた」「ロッホローモンド!中見ることできた?」「全然。あそこはノービジターだよ。でも近くにブリューリーがあったよ」なんて、情報交換しながら食事を終えると、ザックが「行ってみたいパブがあるんだ」と、今度は酒場へ移動。
 「君も気に入ると思うよ」とザックが指し示した先にあったパブがこちらです。

(THE POT STILL)
 
 なんでもグラスゴーじゃそこそこ有名なパブらしい。これは素敵な予感がびんびんする店名である。ザックと二人、にやにやしながらドアをくぐると、店内はかなりの混雑ぶり。人ごみを縫うように奥へ進もうとすると、そんな私たちの前に男性がぬっと現れ、なにやらチケットを手渡してくる。なんぞ?と思いながら、話を聞くと「このチケットでハーフパイント飲めるから」とのこと。なんでもこの日は、グラスゴーにあるケルバーンという醸造所のイベントが開催されていたらしく、来店者にはもれなくハーフパイント無料チケットを配っているとのこと。こりゃ儲けた。チケットを手にカウンターへ行き、一杯のエールと交換してもらいます。

(もらったのはケルバーンのジャガーというエール。おっちゃん忙しそうだったな)

 最初はウイスキーでも飲もうかと思ったが、流石にこの混雑ぶりではそうもいかない。貰ったハーフを開けると、盛り上がり続けるパブに後ろ髪引かれながらも、ホステルへ戻ります。

 そして今度はホステルのパブで一杯。このホステルは安いのにすごいしっかりしてる。クラブのように照明を落とした店内では、片隅でお兄ちゃんががっつりアンプに繋いでレディー・ガガやオアシスを弾き語りしていたり、モニターにはこの日から始まったサッカーのユーロ2012が映し出されていたり、外では今日到着するというロンドンオリンピックの聖火のためのお祭のようなものが開催されていたりと、とても賑やかな夜。

 私はというと、やはりアイラで知り合った、ラフロイグで働いていた男性もグラスゴーに来ているとの情報をザックから聞く。なんでも彼も昨日までこのホステルに泊まっていたらしい。ザック曰く「今日から新しい部屋が決まったとかでホステルは出て行ったよ。連絡してみる?」と。フェイスブックと電話とで連絡を取ることができ、彼も「だったら今から行くよ!」とそれから30分足らずでパブまでやってきてくれて、みんなで4日、5日ぶりの再会。彼はしばらくグラスゴーに拠点を置くらしく「今日からシェアハウス住まいだよ」とのこと。「なんなら明日はウチで飲む?」と、楽しいお誘いまで受けて、翌日はビールや食料をたんまり買い込んでの宅飲み。途中、彼のルームメイトのスペイン人も顔を出したりして、なんともがやがや。さらには3人ともバーテンダー経験ありだったので、あーだこーだと酒談義にも花が咲きました。
 
 色々と話して23時ごろには散開。金曜日の盛り上がりの中、残った缶ビールを片手にホステルまでふらふらと戻ります。いい気分でふらふらしていると、なにやら警官がパトカーの中からこちらをじーっと見ている。はて?なんぞ?と思いながらも愛想良く「ハーイ」なんて缶ビールをふったりしていると、警官はより険しい顔になって、遂にはパトカーを降りてくる。この段になって、一緒に飲んでた日本人男性が気付き「やばいやばい!捨てて!捨てて!」と。酔った頭で捨てて!と聞かされても果たして何を捨てればいいことやら。???みたいな表情でいると「ビール!罰金!とにかく謝って!」と小声で叫ばれるので、とにかく缶に残っていたビールを全部捨てて、ひたすら警官に説明をする。いきなりのことだったが、なるほどビールを外で飲むのは禁止だったか、と即座に理解し「ソーリー。アイムツアーリスト。アイディドゥントノウディスルール」なんて言いながら、とにかく謝る。警官は終始険しい顔をしながら「国は?宿はどこ?何日間いるの?」など詰問をしてきたが、私が、ホントに知らずにビールを飲んでいたことを理解してくれたのか、或いは缶ビールの中身をぶちまけて反省したのが伝わったのか、なんとか今回はお咎めなしということで許してくれた。後で知ったことだが、通常だと罰金で80£とか取られるらしい。ひゃー!「先に言ってくださいよー!」「ごめん、俺も忘れてた」なんてやり取りをしながらも、今となってはいい思い出。賑やかな首都のフライデーナイトは過ぎていきました。

 

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