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スカイ島、観光

2012.05.19

 さて、タリスカー蒸留所の見学を終えたので、とりあえずはこの島に来た目的も果たしたということ。
 しかし、スカイ島の魅力は何も蒸留所だけではありません。私のように、蒸留所巡りをしている者にとっても、それだけを目的としてしまうのはあまりにもったいない島なのです。


(とりあえずタリスカーから島の中心地ポートリーに帰ります)

 ちょうどいいことにレンタルサイクルを一日借りていたので、少しは遠出も出来る。
 一度、ウイスキーのことは忘れて、純粋にスカイ島観光を楽しもうと、まずはポートリーの北にあるオールド・マン・オブ・ストールという巨岩を見に行きます。(本当はドランブイでお馴染みのボニー・プリンス・チャールズを助けたフローラ・マクドナルドの墓があるというので、そこに行きたかったのだが、そこまで行くのはさすがに遠すぎたので泣く泣く諦めることに)

 地球の歩き方先生によると、ポートリーからは約8キロほど、と書かれていたので、自転車なら1時間かそこらで行けるだろうと目算をつけて走り始めます。


(キレーな湖)

 壮大な景色を眺めながら走ること1時間ほど。
 荒涼とした風景の中に聳える巨石の姿が見えて参りました。


(連なる岩壁の先に尖り立つ巨石)

 おっ!あれだな!とペダルを漕ぐ足にも力が入るってものですが、この段になって膝に痛みが。
 それもそのはず、今日はタリスカー蒸留所までの往復だけでも5時間以上自転車を漕ぎ続けている。慣れない自転車はタイヤが小さくサドルは固い。アップダウンの多い道を行くのはかなり体力が必要で、こと膝にかかる負担は甚大であったのでしょう。ホント言うとポートリーまで帰ってきて、こっちに向かい始めた直後くらいからだいぶ膝は痛くなっていた。実はポートリーに帰り着く前からもかなり痛みはひどかった。
 そんなこんなで、巨石の足下までいくのは断念。ちょうど鞄の中の水も底をついてしまったし、これを機会にポートリーまで戻ることにします。


(ありがとうファルコン号!乗り心地最悪だったよ!)

 膝をいたわりながらゆっくりと自転車を漕ぎポートリーの町へ。
 途中、ピートの採掘場と思しき場所を発見して思わず自転車を止める。


(これはまさしく!)

 中に入ってもっと近くで見たかったけれど、しっかりと鉄条網で柵が引かれていたので、それは自重。

 ポートリーに帰り着き自転車を返すと、宿でシャワーを浴びてパブへ。カスクエールを一杯飲んでこの日はおしまい。

 翌日。この日は日曜日で移動できないため、今日も今日とてスカイ島をふらふらすることにします。

 アロスというスカイ島の歴史を紹介した博物館に行ってみたり、インフォメーションセンターでもらったウォーキングマップに沿ってそこらを散策してみたり。


(街中にあったフィッシュ&チップス屋さん。ここのフィッシュ&チップスが本当に美味しくて、この旅でのベストと言えるかもしれない。3日間の滞在で2回も食べてしまった。店の前で食べていると、おそらく同じく観光客と思しきおばさまが「あら?フィッシュ&チップスを食べているの?お味はどう?」みたいに訊ねてきたので「めっちゃうまいよ!」とおススメしておいた)

 スカイの魅力はなんといってもその大自然。街中からすでに気持ちのいい自然に囲まれてはいるのだが、少し離れるとそれはそれは手付かずの自然が残っている。
 その気持ちよさと言ったら、これまでの蒸留所巡りで散々歩き倒して、もう歩きたくないーと言っていた私が、目的もないのにハイキングとかいって出かけちゃうくらい。

 町の東側をぐるっとまわるウォーキングコースがあったので、コースに沿っててくてくお散歩。海岸線沿いを行くコースだったのだが、少し開けた所から、丘の方へと伸びているコースを発見し、少し登ってみようか、という軽い気持ちでそっちのコースへ入っていきます。


(しばらく登って振り返ると、町を一望できた)

 しかし、こちらの登っていくルートは本来のコースではないようで、どんどんとけもの道になっていく、ここらで引き返そうかとも考えたのだが、せっかくだから行ける所までいこうとぐんぐん登っていった結果、丘の頂上まで辿り着くことに。


(気持ちいいー!)

 頂上まで登って見渡す景色の気持ちよさといったらなかった。軽く全能感さえ覚えましたもの。周りは360度見渡すことが出来、後方には荒涼とした風景。前方は切り立った崖で、その先には透き通った海。疲れは一切感じることなく、ただただその景色の中を流れる風を感じておりました。


(下まで戻ってきて撮る海。ご覧のようにきれいに透き通っている)

 そのままコースをぐるーっとまわって町に戻ってくると、昨日とは違う店で一杯。まだまだたっぷり時間があったので、ここは一つ、昨日発見したピートの採掘場へ行ってみるか、と足を伸ばすことに。

 歩きだとそれなりに距離があり、2時間近くかかってしまったが、それでもちゃんと到着。昨日は自重しましたが、今日はちょっと失礼して柵を乗り越えます。


(どろどろにぬかるんだピートを切り出して組み、乾燥させます)


(きっちりときれいに採掘されている)


(まだ掘られていない所はご覧のような面になっている。ピートが年月を経て堆積していく様が分かる)

 ひとかけらを手に取って鼻を近づけてみるも、慣れ親しんだ「ピート香」が一切しないことには驚いた。あの香りは乾燥後に火を入れ、煙になることによって初めて生まれる香りなのだな、と実感することが出来た。

 実際に切り出されている現場をみてみると、この島がピートに囲まれた島であることが理解できた。とはいえ、写真のようなピートになるには何十年、何百年という膨大な時間が必要。このペースでピートを採掘していったら、百年後にはピートが尽きる、という計算もあるんだそうだ。近い将来、ピーティなモルトが無くなると考えると、こんなに悲しいことはない。


(暮れ行くスカイ島)

 いまから対策を練った所で、ピートの消費はやめることが出来ないので、いずれ枯渇することは確実です。そうなった時、スコッチはどうなるのか?新たな味わいがスコッチのメインとなり、ピーティなモルトはノスタルジーを喚起するためのアイテムとなってしまうのでしょうか?はたまた、科学の進歩でピートの代用品が生まれるのでしょうか?
 スコッチの未来に思いを馳せながら、スカイ島滞在最後の日は暮れていきました。

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