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自宅テイスティング:グレンエルギン (1971)-1988 16年 サマローリ フラグメンツオブスコットランド

80年代ボトリングのサマローリらしさも感じられる幸せなボトルでした。

 

グレンエルギン GLENELGIN (1971)-1988 16yo SAMAROLI FRAGMENTS OF SCOTLAND 50%
one of 648 bottles

・香り:
強く厚みのある蜂蜜,柔らかなバニラ,シナモン,りんご,オレンジやレモン,滋味深い麦感もしっかり,淡くハーブ系の植物感とミント,少し妖艶さも感じる。

・味わい:
オレンジ,強いコクのある蜂蜜の甘味,良い酸味,ブリニーさもある,旨味の濃い麦感,凝縮感があり噛み応えのあるテクスチャー,樹液,少しミント,シナモン,度数以上に厚いボディ,少しスパイシーでオイリー,心地良いオークが味を深める,太い味わいで余韻は長い。

・余韻:
濃い蜂蜜と麦の旨みが長く残る。

・加水:
多めに加水しても崩れない。きれいに伸びる。

・総評:
コクのある蜂蜜の甘味が非常に印象的。
未熟感も過熟感もなく厚いボディがあり,熟成において何も失わない状態でボトリングされたような,まさに80年代サマローリらしい味わい。

【Very Good/Excellent】

サマローリが1988年にボトリングした,「フラグメンツオブスコットランド」シリーズから,スペイサイド表記のグレンエルギン16年熟成です。
サマローリが各地域から選んでボトリングした伝説的なシリーズで,他には私の知る限り,アードベッグ(アイラ),ロングロウ(キャンベルタウン),グレンギリー(東ハイランド),ハイランドパーク(オークニー),そしてロングロウのニュースピリッツがあったと思います。

とにかく蜂蜜感が非常に強いボトルで,柑橘系フルーツや粘性もありエルギンのハウススタイルをしっかりと感じるとともに,80年代詰めのサマローリらしい,熟成において徐々に失われていくボディなどの要素を最小限に留めたボトリングだと思います。
長期熟成でボディと引き換えに出てくるようなエステリーなフルーツ感はありませんが,ナチュラルにフルーティです。そして樽感が強くなく,旨味のある厚い麦感も非常に好印象で,高次元でのバランスが取れており,今の感覚で16年熟成とは到底思えない素晴らしい仕上がりのボトルでした。
さすがに経年変化もあるためボトリング当初からボディはなだらかな下降線上にはあるのでしょうが,それでもボトリングから30年近く経過した現在も十分な飲み応えを残しており枯れた感じは全くありません。そのぶんこなれてまろやかな粘性も感じられ,今なお飲み頃だと感じました。
原酒の質と樽さえよければ,このくらいの熟成(15~20年くらい)でしばらく瓶内で寝かせたくらいが私の嗜好においてはベストなのではないかと思います。
 
80年代ボトリングのサマローリに関しては,思い入れもあり無意識に依怙贔屓してしまう部分もあるのですが,それを差し引いても突き抜けた素晴らしいボトルだと思います。
 
さて,このボトルもオールドですし,昔の原酒や樽は良かったという結論にもなりそうですが,実は自分はそうは思っていません。
90年代蒸留のものにも,今回のボトルのような傾向のボトリングがあることを追記しておきます。
例えばマネチョのロッホナガー,例えばリベットやアバフェルディのオフィシャル限定ボトル,このあたりは瓶内で10~20年寝かせておいたら,おそらくサマローリやセスタンテの80年代とも共通点のある香味になるのではないかと思っています。
樽と熟成環境が良ければ,今の原酒でも素晴らしいものは作れるのだと思いますね。
そんなわけで,こういう飲み頃の素晴らしいオールドボトルを飲みながら,未来への希望も感じています。
 

 

#グレンエルギン (GLENELGIN)

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