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元気です 長寿笑顔 <4> 竹中豊子さん(82)

過去の南蛮屋
記者の持ち出さんの記事
いいですね。

2007/09/22 中国新聞朝刊

元気です 長寿笑顔 <4>

竹中豊子さん(82)=周南市新町

人生詰まったカクテル

 シェーカーから水色のカクテルがグラスに注がれる。
「暑い日だったから、さわやかな『サザン・シー』をどうぞ」。笑顔を添えて差し出す。
周南市のJR徳山駅近くのカクテルバー南蛮屋。
開店して四十七年、夫の哲治郎さんを八年前に亡くしてからは一人で切り盛りする。

 カウンターだけの九席。壁には尾崎正章の油絵や川上澄生の南蛮船の版画。
すぐ近くに実家のある写真家林忠彦の写真も。
「おばちゃん、と言いながら座るのはいつも中央の席。太宰治の写真の裏話をしていました」と林の姿を懐かしむ。

 終戦まで、下松市の日立製作所で陸軍の潜水艇製造部門の事務をした。
戦後は美容学校で学び、実家があった周南市櫛ケ浜で美容院をオープン。
その後、常連客が開いたバーの手伝いを頼まれたのが転機になった。

 「すごくきついのを」というリクエストで、ジンとテキーラをベースにした「ヨシキ・デビル」など
オリジナルカクテルは約三十種。
「ふられた」としょんぼりした顔、「子供が生まれた」と喜ぶ顔。思い出が重なる。

 「ほっとできる場」を心掛ける。「おいしい」と言われるのが何よりの励み。
お酒を残されたことがないのが自慢だ。
ニュースのチェックを欠かさず、食事はきちんと三度取る。
これまで腰を痛めた三年前に二カ月休んだだけだ。「丈夫な体に生んでくれた両親に感謝したい」

(持田謙二)

#BAR(周南・徳山)

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