Bar.come(大阪・十三のモルトバー)

阪急十三の東口を出てまっすぐ東へ商店街を抜けると、見慣れないボトルがぞろぞろ並んでいます。 コールバーンやノースポートやローズバンクといったポピュラーなもの(笑)から、キンクレースやレディーバーンといったレアなものまで取り揃えております。単にモルトを注ぐだけの店です。 つまみは塩豆のみしか用意していませんので、持ち込みは常識の範囲で自由です。 安心してドアを開けてください。

2009.01.08【日記】

5001年バーへの旅

 仕事が一段落付いた。時計を見ると8時半を少し回っている。まっすぐ帰るか、バーに寄るか。
 帰ったらチビ助がまだ起きている時間だ。ひとしきり遊びをせがまれることは目に見えている。
 このところチビ助の起きている時間に帰れたためしはないので少し喜ばしてやることもちらっと頭を過ぎったが、2週間近く顔を出していないバーに向かうことに決めた。

 いつもの駅で降りて、いつもの道を辿り、いつものドアを開ける。
 2週間前と何も変わった様子はない。
 いつものように”いらっしゃいませ。”と迎えてくれる。

 先客が何人かいつものようにうっとりとして、思い思いの酒を楽しんでいる。
 落ち着いていいバーだと俺は思って通っている。
 ちょっと高めなのだがお客さんの層もそれなりで、場を乱す人や変な人は来ないので安心できるのだ。

 自分の好きな席に座って、カウンターのボタンの上に手を置く。するとバーテンダーロボットが前にやってくる。
 ”今日は何にいたしましょう?”とお決まりの文句が聞こえてくる。
 このボタンが曲者でスキャナーであり、分析器であり、ドリンクサービスまでをこなしてしまうのだ。
 血圧はもとより血液中の成分分析を瞬時に行い、客の体調を瞬時に判断してくれるのだ。ストレスが溜まっているとか、どの程度疲れているとか、グダグダいう必要は無い。
 また同時に、このボタンに置いた指紋から、年齢や過去に飲んだ酒のリスト、口座番号までが瞬時にロボットに転送される。
 あまりに体調が悪いと、”今日はお帰り下さい。”というと同時に適切な医師への紹介状がプリントアウトされる。
 
 ここで帰れと言われたら、チビ助の相手をしてやる事も考えていたのだが、まだ医者にかからなくてもいい状態であると安心して、少し飲んで帰ることに決めた。
 俺は”スピリタスをストレートで”とオーダーしてみた。
 ”すると今日の貴方の体調から考えますと、もう少し優しい物にされた方が良いかと思われます。”と言われた。
 ”少し喉が渇いているので、スッキリしたものからもらおうか。”とオーダーしたら、ロボットが”かしこまりました。”という返事と同時に、ボタンに置いた手にチクリとした痛みが走る。

 バーに酒の瓶は1本も無い。
 コンピューターが1台と、バーテンダー代わりのロボットと、ボタンの並んだカウンターと、座り心地のいい椅子があるだけである。
 バーと言っても酒を飲む訳ではない。
 ボタンから脳を刺激する成分が血中に送り込まれ、オーダー通りの気分を味わえるのである。これがチクリの元である。子供はこのチクリが苦手なので、あとの気分の良さを味わえないでいるのだ。

 チクリと感じた直後から俺は、南国の島で晴れ渡った空の下さわやかなカクテルを飲んでいる気分になる。
 南国の島を連想させる成分までもが含まれているのだから、素晴らしいサービスである。
 このカクテルを、目の前を歩くビキニの美女をつまみに楽しんでいたら、20分ほどで無くなった。
 もちろんビキニの美女は、オプションであり別料金が加算される。
 カクテルが空になると、意識はバーの中へと戻ってくる。

 ”もう1杯もらおうか。今度はじっくり飲めるモルトウイスキーを”とオーダーする。
 ロボットが”かしこまりました。”という返事と同時に、ボタンに置いた手にチクリとした痛みが走る。
 今度は暖炉の前のロッキングチェアーで、テイスティンググラスを持っている。中には深みのある琥珀色の液体が入っている。グラスからは、チョコレートともカカオとも取れる香りと焼いたリンゴの香りが漂っている気分になる。
 後ろに落ち着いたジャズが流れている。これもオプション。
 チェイサーはサイドテーブルに置かれている。ちびりちびりと飲みながら、酒が開いて香りが変わっていくのを1時間ほどかけて楽しんだ。
 またグラスが空になると、意識はバーの中へ。

 ボタンに手を置いた時点で、チャージが発生する。これは健康管理費である。
 ボタンから手を離した瞬間に、オーダーした酒とオプションによって値段が違うが全部合わせて、即座に俺の口座から代金は引き落とされる。
 俺の口座の管理をしているのは、家で待つ嫁である。この時点で嫁にバーに寄ったことがばれるシステムになっている。指を離さない限りばれないのだが、それではいつまで経っても家に帰れない。

 勇気を持って”ごちそうさま”といって立ち上がる。
 気分は酔っているが、血中アルコールは0%。
 バーテンダーロボットの”ありがとうございました。又のお越しを。”のお決まりの文句を背中にドアを開ける。
 気分良く家路に付いた。

 家の玄関を開けたら目の前に、仁王立ちの嫁が。
 ”たまには早く帰って子供の相手もしてやってよね。前にそう約束したでしょ!”とカンカン。
 ”分かった。今度、仕事が早く片付いたらチビ助の相手をするよ。”と言ってみても過去のバー通いのリストは彼女が握っているのだ。
 ”今度、今度って、何時になったら今度が来るのよ!貴方の家系って3000年前から変わらないんだから!”
 
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