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モルトとハンティング

 初めてスコットランドに出かけたのは、フライフィッシングの取材である。10日間でサーモンとレインボートラウト・ブラウントラウトを釣る旅であった。

 向こうでは、サーモンの場合フィッシングと言わず、ハンティングという表現を使う。相手は、大きいものだと1mを越すこともあるので、ラインシステムも丈夫だし、ロッドも#10~#16ぐらいの頑丈なものを使う。キャストのテクニックも高度なことが要求され、スペイキャストというスペイ川で生み出された、非常に美しいループを生み出すキャストが多用される。

 5日間の取材で、バイトは日に3~4回、ヒットが2回。内1回はブレイクで、結局ランディングできたのは、メスの85cmぐらいだけだった。ヒレに傷ひとつなく、非常に美しいサーモンだった。私もタックルを借りて1日だけトライしたが、残念ながらバイトが1回あっただけで、夢のサーモンを自分の手でしとめることはできなかった。

 川に入るのに入漁料を払うのは日本と同じ。日本の場合はその川の漁協に対して支払うのに対し、スコットランドではその川の領主(貴族)に支払う点が異なる。向こうの川は、その川の流れている土地を持っている貴族(最近は権利を売ってしまって所有者が変わっている場合も多い)の持ち物である。

 たまたま取材した川が、ある貴族の持ち物だったことと、イギリス政府観光局とタイアップしていたこともあって、晩餐に招待を受けた。タキシード(前もって聞いていたので日本から持参)を着て、貴族の屋敷に招かれていった。はっきりいうと、食事はたいしたことなかった(とういわけで、貴族の名前は伏せておく)。

 食事の後に注がれたモルトウイスキーだけは絶品だった。当時は、バーテンダーになる気など更々なかったので、ビンを見せてもらわなかったのだが、今になると悔やまれる。上品な琥珀色で、瓜の香りとシェリーの香りがミックスされ、上品な甘みがあり、いつまでも香りが残っていたことは覚えている。記憶をたどって、蒸留所を当てることは不可能である。

 幻のモルトとサーモンに会いに出かけたい

#釣り

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