SAKEDORIが発信する、洋酒業界の最前線で活躍している人々へのインタビュー特集「Cutting Edge」。
前回に引き続き、ガイアフローディスティリング株式会社 代表取締役 中村大航氏への独占インタビュー第2回!

ガイアフロー社設立の経緯や、中村氏とウイスキーとの出会い、その魅力に惹かれて静岡蒸溜所建設に至るまでの経緯など 今まで伺うことのなかったプライベートな部分にも触れていきます。  


 
ウイスキーとの出会いとモノ造りのDNA


鈴木氏
「引き続き、よろしくお願いします。中村さんがウイスキーと出会ったのは、いつ頃だったのでしょう?」

中村氏
「うちは祖父が始めた精密機器を製作する会社をやっているのですが、父がウィスキー好きでして。子供の頃から、父が東京に出張すると、帰りに八重洲のリカーズハセガワさんで、珍しいウィスキーを買ってくるのを見ていました。それで自然にウィスキーが身近にある環境で育ちましたね。」

鈴木氏
「ご自身がウイスキーに魅了されていったのは、どのような経緯だったのですか?」

中村氏
「ちょうど大学生で都内にいた頃にバブル期で、社会人、主に今でいうIT関係の人たちとの付き合いが多かったんです。そんな中であるイタリアン・レストランのオーナーに、モルトウィスキーのテイスティング会に誘われ、シングルモルトの魅力に目覚めました。Barに通うようになったのは20代からですが、シングルモルトを深く掘り下げて飲むようになったのは30歳の頃でした。2003年に余市の「マイウイスキーづくり」に参加したのも、ウイスキーに深く傾倒するキッカケでしたね。」

鈴木氏
「飲み手としては長いキャリアをお持ちですが、それを仕事にしようとしたきっかけはあったのでしょうか?」

中村氏
「30代中頃には静岡県内の日本酒蔵元等も訪ね、あらゆるお酒を深く味わうようになりましたが、やはりモルトウィスキーが最高だな、と思うようになりました。同時に父を継いで家業の精密機器の仕事にずっと携わってきたこともあり、文化的なもの、それは、お酒も含めてなのですが、そうした受け継がれていく伝統的な物事が、これからの日本人には必要だと思うようになりました。また同時に、日本のお酒を海外に広める仕事に自分の夢があると感じるようになりました。それで2012年にガイアフローを立ち上げ、一度は引退した父に元の会社の社長に復帰してもらいました。」

ー幼い頃からウイスキーに触れる機会に恵まれていたこと、家業である精密機械業からモノ造りの素晴らしさを知っていたこと。これら全てが、中村氏をウイスキー造りへと駆り立てる原動力であり、ウイスキー造りは必然だったのかもしれませんね。  


 
ガイアフロー社設立と業界参入ー初めから蒸溜所建設があった


鈴木氏
「中村さんと最初にお会いしたのは、3年程前のウィスキー・フェスティバルの会場だったと思うのですが。」

中村氏
「2012年のウィスキー・フェスティバルの会場ですね。マックミラとボックスで出展していました。あの時が業界デビューです。」

鈴木氏
「ガイアフローという社名は少々変わっているな、という印象ですが、どういう意味が込められているのでしょう?」

中村氏
「会社自体は2012年1月に設立したのですが、実は、この時は再生可能エネルギー事業が主事業でした。それでガイア(地球)とフロー(流れ)と言う意味で付けたのですが、自然が醸し出すモルトウィスキーのようなお酒にも当てはまるかなと思ったのです。」

鈴木氏
「そこから、どのような経緯でウイスキー事業を始めたのですか?」

中村氏
「先程お話したように、アイラ島へ行ったことが一番のきっかけです。久しぶりにヨーロッパへ行くことにしたのですが、その頃には、もうウイスキーファンでしたから、念願のスコットランドも訪問しようと考え、やっぱり行くならアイラ島だと考えました。」

ーそれはまさに偶然がもたらした運命的な出来事になったようです。

中村氏
「アイラ島で、マイクロディスティラリーなキルホーマン蒸溜所を見て、頭の中に想い描いていた『いつかウイスキーを造ってみたい』という想いが現実的なものになり、蒸溜所を建設する決心をしました。それから、まずは業界との繋がりを持ちながら建設計画を進めていこうと考え、まだ日本に輸入されていないモルトウィスキーや蒸留酒を輸入するインポーターとして業界に参入しました。

実は2012年12月のウィスキー・フェスティバルに出展した時は、まだマックミラ蒸留所との契約も成立していません でした。ですが、とにかくすぐに動きたかった。それで、契約も成立していないマックミラのサンプルを抱えて、右も左も分からないまま出展したんです(笑)

その後、2012年の9月にブラックアダーのロビン・トチェック氏と会って、翌年4月からブラックアダーの日本正規代理店としてスタートしました。そして夏頃には現在扱っているブランドが次々と決まり、インポーターとしての体制が整ったので、本格的な蒸留所建設用地の検討を始めました。」
 
 
 

ー決心をしてすぐに行動した中村氏。その人の想いが強ければ自然と必要な人やモノ、情報が集まってくることを耳にしますが、まさに中村氏にも、そのような事が起こり始めていきます。

中村氏
「ロビン・トチェック氏と出会い、アドバイスを貰ってから、まだ蒸溜所建設予定地も決まっていないうちにフォーサイスにポットスチル製造依頼をしたんです。これが2014年5月でした。

実は、ある方からもアドバイスを頂いていました。その方から『中村さん、蒸溜所を建設するならパラレルで動かなきゃ進みませんよ。1つ1つクリアしていこうと思ったらダメなんです』と仰っていただいたんです。ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所の肥土伊知郎社長です。

軽井沢蒸溜所の設備についても、業界を通して知り合った方から、こういった競売があると教えていただきました。また、地元の多くの皆さんの協力もあり、静岡市所有のこの土地に建設することになったことで、静岡市との協力体制が確立されました。マッサン効果もあったでしょうし、観光産業としても市や地元からの期待も大きく身の引き締まる想いです。それにしても、当初は、まさか市長と記者会見するなんて思ってもみなかったことですね(笑)」


 
静岡蒸溜所が目指すウイスキー、そして中村氏の挑戦


鈴木氏
「中村さんが目指すモルトウィスキーはどんな感じのものでしょうか。」

中村氏
「華やかさと程よい質感がバランスした、ハイランドモルトのようなものができるといいですね。そして、まずは地元の方に愛されるウイスキーにしたいと考えています。そしてやがて国内外で愛されるような。蒸溜所名も静岡蒸溜所とするつもりですから、シングルモルトも”シズオカ”にしたいと思っています。」

ー具体的な銘柄が気になりますよね。
 
 
中村氏
「具体的な銘柄は明言しないほうが良いでしょう。まだ未知のことですし、楽しみでもありますからね。」

鈴木氏
「その他に、どのようなことに挑戦しようとお考えですか?」

中村氏
「先程も触れましたが、地元の蔵元やAOIビールさんとのコラボは考えています。将来的にすべて地元静岡産の原材料でと考えているのも、故郷・静岡にこだわりたいという想いからです。同時に、私自身が様々なことに挑戦したい性格なんですよね。例えば、静岡茶で何かできないか? みかんで何かできるだろうか?・・・なんてことも考えたりしています。」
 
 

ガイアフローの取扱商品について


ー最後に、現在ガイアフロー社で取り扱っている商品についても伺いました。

鈴木氏
「すでにガイアフロー社では江井ヶ島蒸溜所の”あかし”や、アスタ・モリスから東海道五十三次ラベル等をリリースしていますが、それらは中村さんの企画ですか?」

中村氏
「そうです。”あかし”については第一弾で共同企画だったのですが、それ以降は私の方でやりました。東海道五十三次ラベルについては、静岡に縁があるかなと思ったからです。他にもアイディアはいろいろあるのですが、目下は蒸留所建設で手一杯でしばらくは手が付けられない状態です。」

ーガイアフローでは、その他にも様々なワールドウイスキーを取り扱っていますが、それらに着目した理由は何だったのでしょう?

中村氏
「業界に参入したとき、ご存知のようにスコッチウイスキーは既に販売元が決まっていますから、他に何かないかと考えました。そして世界に目を向けると、各地で様々なクラフトウイスキーが造られていて、それが面白かったんですよね。『世界には、まだまだ面白いウイスキーが沢山ある』そのことを日本の皆さんへ紹介したかったんです。

とは言え、当社もまったくの無名でしたし、ワールドウイスキーが面白いといっても、軽い興味だけで終わってしまいなかなか売上につながらず苦しい日々を過ごしました。業界参入と同時に蒸溜所建設計画も進めていましたから、販売戦略や広報が追いつかなかった、というのもありましたが、とにかく当時は手一杯でした。

ようやく知名度が上がって販売が軌道に乗ってきたのも、ここ1年のことです。アスタ・モリスの東海道五十三次ラベルや、エルドヴァッテン、江井ヶ島の”あかし”や”桜”といった商品が皆様からご好評いただき、大変ありがたく嬉しく思っております。他にも、まだまだアイディアはあるのですが、まずは蒸溜所建設ですね!」

鈴木氏
「今日はありがとうございました。新しい蒸留所、そして素晴らしいシングルモルトウィスキーに期待しています。」

中村氏
「蒸留所が出来ましたらまたぜひ見に来てください。北海道の厚岸(あっけし)蒸留所も同時期に完成、操業すると思いますので、日本のウィスキーはこれからもっともっと面白くなっていくと思います。」

 
 
ガイアフロー株式会社
ガイアフローディスティリング株式会社
代表取締役 中村大航氏

1969年 
静岡県清水市(現在の静岡市清水区)生まれ     
長年、家業である精密部品の製造会社の代表を務めていたが、ウイスキーを自らの手でつくることを決意し、経営から身を引く。

2012年1月
ガイアフロー株式会社を設立し、ブラックアダーやニューワールド・ウイスキーの輸入販売を手がけ、スコットランドのみならず、世界各国の蒸留所・醸造所を巡る。

2014年10月
ウイスキー製造を目的としたガイアフローディスティリング株式会社を設立し、静岡に蒸溜所を建設するプロジェクトを進めている。

2016年春 静岡市玉川地区に、静岡蒸溜所が竣工の予定。

ガイアフロー株式会社HP http://www.gaiaflow.co.jp


ブラッカダーやアスタモリスをはじめ、ワールドウイスキーが購入できるガイアフローのショッピングサイト『WHISKY PORT』はこちら



【インタビュアー】

Malt House ISLAY
オーナー 鈴木 勝雄氏

1953年
静岡県浜松市生まれ。
レコード会社クラシック・ディレクターを経て、音楽雑誌のライター、編集を従事。 後にオーディオ、ビデオの評論を行う。

1997年
東京都練馬区にMalt House ISLAY(アイラ)をオープン。スコットランドのモルトウイスキー蒸留所の取材、執筆を行いつつ現在に至る。

Malt House ISLAY HP http://homepage2.nifty.com/islay



【編集・構成】SAKEDORI
本記事は、Malt House ISLAYオーナー鈴木氏の原稿を基に、SAKEDORI運営が編集・構成いたしました。

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