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怖い話 <雫>

いやー。暑いですね。
こう暑いと寝苦しいですね。

最近は「涼しくなろう」と怖い話をよく読んでいます。
昔から怖い話は好きなのですが、映像で「わっ!」と驚かせるよりも
「伊勢物語」「雨月物語」のような怪談噺が好きですね。

そんな私もなんだか昔からちょっと「不思議な何か」があるみたいなのです。
まぁ、どうせ信じてもらえないので、ここでは言いませんが・・。

私の「不思議な何か」とは別に
私が体験した怖い話をしたいと思います・・・・。

あの日も暑い日でした。

私は乗車率100%を超えた電車のシートに腰かけていた。

私の左隣りにはおばさんが。

右隣りには20代前半のスーツを着たOLさんが

行儀よく自分の膝に手を揃え、俯いていた。

どうやら寝ているようだ・・。

そして、そのOLさんの向いにつり革に掴まったおじさんが佇んでいた。

決して多いとは言えない髪の毛がクーラーの風でピラピラと細かく蠢いている。

辛うじて掴まってはいるが、頭を垂れ、ここからも寝ている様子が分かる。

おじさんの眼鏡は汗でずれ落ち、今にも眼鏡を落としていまいそうだった。

私は気になって仕方なかった。

おじさんの眼鏡が落ちてしまうかもという心配もあったが

それ以上におじさんの睡眠が深くなっている事に気付いたからだ。

おじさんの力は既に右手のみになっており、体は海老反り

徐々にそのOLさんの方へ傾いていったのだ。

今では(辛うじてつり革に掴まっている)だけで

その手が滑ると完全にOLさんに覆いかぶさってしまうまでになっている。

次の瞬間・・・・。

私は見逃さなかった。

おじさんのだらしなく開いた口元から光を見つけた。

その光はみるみると膨らみ一粒の雫となった。

雫はゆっくりと、そして電車の揺れに合わせるように

長い糸を引いて落ちていく・・。

私はその雫の「行き先」が気になった。

真下にはOLさんの頭がある・・。

雫は電車の揺れに合わせながらも、なおも落ち続け

OLさんの頭を翳め

両膝にきちんと合わせておいた手の甲に落ちた。

その雫に目を覚ましたのか、彼女は小さく反応し

自分にしか聞こえないような小さな声で

「よだれこぼしちゃった・・」

といい、手の雫を早々と舐めた。

 

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