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ウイスキーの知識や資格に関する私見 (前編)

NHKの連ドラ「マッサン」の効果で,最近雑誌などで過去にないくらい大量のウイスキー関連の特集が組まれています。
私も「ウイスキー」の文字に反応してしまい,その多くに目を通します。大概立ち読みですが。(笑)

多くは一般向けの雑誌ということもあり,ウイスキーとは何ぞや,どんな原料を使ってどうやって作るか,どんな地域にどんな蒸留所があるのか,などなど,ウイスキーの基礎知識もある程度書いてあるものが多いですね。

さて,ウイスキーを深く楽しみ,テイスティングスキルを上げていくうえで知識はどの程度必要なのでしょうか。
また,それに関連して,ウイスキーに関する資格などは意味があるのでしょうか。
そういったことを以前からしばしば考えており,愛好家のなかでもかなり意見が分かれるところかなとは思いますが,今回良い機会なので私見をまとめてみました。

まず,知識に関してはある程度以上あった方が良いと考えています。

もちろん,なんとなく飲んでも美味しいものは美味しいですし,経験が増えれば好みの幅も広がっていくでしょう。
また,好きな蒸留所の特徴や地域など,わざわざ能動的に学習しなくとも飲んでいるうちに自然と覚えてくる知識もあるでしょう。
とはいえ,効率良く経験値を積んでいくためには,早期からベースになる知識があった方が良いと考えます。

また,未だにマッカランを所有しているのがサントリーだなんてことを当たり前のようにBARで語る人がいたり,ネットで明らかに間違った情報を悪気なく流す人がいたりと,受動的に得た情報はやや信憑性に欠ける部分があると思います。
ウイスキーと真剣に長くお付き合いしていくつもりがあるのであれば,正しい知識を能動的に得ていくのが好ましいと私は思います。

 


これらは私が買って読んだウイスキーに関する本や雑誌などの一部です。
改めて引っ張り出してみるとすごい量です。。。

知識に関して,スコッチのモルトウイスキーに限って具体的に書くなら,
・モルトウイスキーとブレンデッドウイスキーの違い,シングルモルトとは何ぞや
・モルトウイスキーの作り方(製麦,糖化,発酵,蒸留,熟成など)
・蒸留所に関して,
 どの地域のどこにあるのか
 どういう作りをしているのか(ポットスチルの形態,ピート使用の程度,フロアモルティングの有無,仕込み水の硬度,など)
 所有している企業とどういうポリシーで作っているのか(シェリー樽・バーボン樽にこだわる,など)
 過去にどういう作りの変化があったか(~年までフロアモルティング,~年に閉鎖・再開,など)
・樽の種類や樽による香味への影響
・熟成期間による香味の変化
・ウイスキーの飲み方や基本的なテイスティングの方法

パッと思いつくところだとこんな感じです。

他にも,スコッチウイスキー&スコットランドの歴史と背景にある世界情勢なんかも知っていると理解も深まり楽しいと思いますが,さすがにここまで含めてしまうとちょっと大変ですしテイスティングとは関連が薄くなりますね。

上記の知識の一部でもあれば,その部分に関して思いを巡らせながら目の前のグラスと向き合えると思います。
「このウイスキーはこんな味がして美味しい」,というのも,知識があれば,「このウイスキーはこの種類の樽で~年熟成して,この地域でこの時期はこういう作りをしていたからこんな味なんだろうな,そういえば同じ地域のこの蒸留所と似た香味があるな」,などという楽しみ方になります。

あくまで例ですが,
・このウイスキーはブレンデッドウイスキーと比べるとクセがあるけど,それはシングルモルトならではなんだな
・このウイスキーは煙の香りが強くバニラっぽさも感じるが,それはアイラの蒸留所でバーボン樽熟成にこだわった作りだからなのかな
・このウイスキーは複雑なフルーツの香りがあってアルコールの刺激が少ないけど,それは長期熟成したからなのかな
こういったことを考えながら飲み続けるわけです。

また,そうして考えながら飲むと,好みかどうかだけでなく,興味深いかどうかという面でもウイスキーを楽しめます。
より多くの価値観でウイスキーを評価できるようになり,多種多様なボトル達に対して優しくなれる気がします。

そして,そうやって知識をベースに深く考えながら味わった方が,記憶にも残りやすいと思います。
以前記事にしたように,飲み込んでいくと無意識に過去の経験・記憶にあるボトルとの比較をしながらテイスティングをすることが多いですから,より深い記憶を残すことは未来のボトルをより深く楽しむことにつながります。

なお,蒸留所のハウススタイルやヴィンテージごとの特徴,そしてボトラーごとの特徴など,味わいの特徴に関するイメージもあるとテイスティングをより深められると思いますが,これらに関してはあらかじめ知識として詰め込むよりも知識や経験をベースに飲みながら覚えていく方が記憶に残ると思います。
そしてそういう経験とイメージが増えていくと,さらに深く考えながらテイスティングできるようになると思います。

今思い出すと,自分にとってはむしろここから先のほうが,テイスティングをより深く楽しく行うことに直接つながっていったと感じます。
知的好奇心を満たしながら飲み続けていくわけです。飲んでは知識をつけて,またその知識を持って飲む。
そうやって飲んでいくと,理解が深まりさらに知的好奇心を刺激されるようなものに出会うという良い循環に到達します。

ちなみに,私は未だにオールドボトルの知識やその年代を見極めるための知識に乏しいですし,まだまだ蒸留所やヴィンテージによる特徴も十分に捉えられていません。
やはり飲みながら知的好奇心を満たす毎日です。

そんなわけで,いろいろ飲む前にある程度の知識をつけておいたほうが,より楽しいウイスキーライフになるのではないかと私は思います。

一般向けの雑誌の特集もわりとしっかりとした内容だったりすることもありますが,やはり万遍なく網羅されているとはいいがたく,どちらかといえばウイスキーに特化したある程度の量もある書籍を参考にした方が,体系的な知識になりますし,辞書的に使えたりしますし,痒いところに手が届くと思います。

では,どんな書籍が良いのでしょうか?
私の場合,今は次回に書く資格取得の際に使用したテキストが知識のベースになっていますが,正直これはかなりマニアックな内容で,本も分厚く白黒で,それこそ資格を取るつもりでもない限りとっかかりにくいので最初はお勧めできません。
その前には故MJのモルトウイスキーコンパニオン,土屋守さんのモルトウイスキー大全なんかを読みつつテイスティングをしていましたが,主に蒸留所についての知識を得るために使っており,それとは別に体系的な知識をつけるために読んでいた本もありました。
しかし10年以上前のことで,本の名前までは覚えていません。今それが売っているかどうかもわかりません。

私がすでにある程度知識をつけてから読ませていただいた本で,飲み始めのころに読んだら良かっただろうなと思った本には,吉村宗之さんがお書きになった「うまいウイスキーの化学」があります。
持ち運びしやすい小さめのフルカラーの本で,用語や製造,各蒸留所の特徴,そして飲み方に関しても記載があり,とても読みやすいです。
個人的には,樽の種類のディテールやそれらで熟成した結果として出てくる香味などのもうちょっと突っ込んだ内容,そして特に著者である吉村さんが得意とされているテイスティングに関しての記載が欲しいなと思うところではありましたが,モルトに興味を持った人の痒いところの多くに手が届く内容だと思います。

また,私の知人のウイスキー愛好家の中でも,ここ数年の短期間で驚くほどのスキルを身に着けた方(よくコメントもくださる大島さんです)からも教えていただきました。
やはりコンパニオンや大全も使っていらっしゃったようですが,体系的な知識を付ける本としては「ウイスキー&シングルモルト完全ガイド」という本を何度も何度もお読みになったそうです。
せっかくですので,ここで紹介するにあたり,私も買って読んでみました。
マニアックになりすぎないレベルで,イラストや写真も多く,それでいてウイスキーを理解するうえで必要な,特に初心者の痒いところに手が届くような内容がかなり網羅されています。
スコットランドの情報や現地の雰囲気などについて書いてある部分もあり,現地への親しみも湧いてきます。
ちょっと前の本なので,ボトルや蒸留所の情報に関しては今と異なっている部分も結構ありますので,そこには注意が必要(特にボトルとそのテイスティングノートは今のものと違っているものがほとんどです)ですが,先ほど書いたような,ウイスキーを深く楽しむうえで有効と思われるような知識をつけるのには十分に役に立ってくれそうな本でした。

どちらの本も,まだ基礎知識に自信が無い方や,知識を整理したい方には特にお勧めできる内容だと思います。

他にも,特に最近のものでお勧めの本がありましたら,教えていただけると幸いです。

 

次回は知識に関連して,資格の話を書きます。
 

#考えたこと #モルト初心者の方へ

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